健康の原理とは食物と体の関わり合いであるということを、50年以上にも渡って研究し立証してきた、森下敬一博士による本。図書館で借りてきました。
食べたものが消化されるプロセスと血液の働きは密接なつながりがあること、病気が起こる要因と食生は深く結びついていることが、理論立てて説明されています。また、自然医食を理解する上でとても重要なポイントとなる、"腸(厳密には小腸)造血説"が、図や写真、フローチャートを用いて説明されており、とても理解し易いです。
質の良い血液が、健康な体を作ると言われます。逆に言うと、慢性病は血液の汚れによって生み出された炎症ということになります。食物は赤血球や体細胞を作る直接的な素材なので、食物の内容次第で健康状態が決まります。腸内の腐敗を防ぐことが、慢性予防のカギになるのです。
そこで腸内の腐敗を起こす食品とは何かー。
森下博士は、動物性蛋白、精白食品(白米や白パン、白砂糖)がその代表だと述べています。このあたりはマクロビオティックの理論とおおいに共通しています。森下博士も玄米菜食をすすめていますが、単なる自然食ではなく、自然医食が重要であるということを強調しています。
とても印象的だった点をいくつか抜粋してご紹介します。
1.現代の栄養学が間違った"バランス食"の見解を生み出している
- 食べる人の精神状態も違えば、噛む回数も違う。消化液の分泌具合も違えば、いろいろな消化液の活性度も人それぞれだし、時と場合によっても違う。栄養価は、その人の腸内細菌の性状による。つまり、受け入れ側の生理の状態が千差万別なのだから、同じ栄養効果が出るわけはない。
- 食品自体、同じ種類であっても、その生育条件によって、成分組成は大きく異なっているはずだ。実際、土壌の質によって、ビタミンCのほとんど含まれないほうれん草もあったりする。カロリー計算などは、全く無意味なのである。
2.西洋医学(現代医学)は二元論的発想である
発病の舞台であるわれわれの「体」というものを置き、それとは別の侵略的存在として、「病原体」というものを設置する。体と病原体といった二つの存在を並列的に並べて考えている。
3.自然療能説は一元論
生命現象の真髄は、形としてあらわしてみるとラセンになる。生命の世界は、「全体的」(総合的)に見るべきものであり、すべては「曲線的」「中間的」「可逆的」であることがわかる。これは、命がある限り、どんな病気も治る可能性をもっているということである。生命の世界は、すべて可逆性が支配しているから、しかるべき条件さえ整えれば、どちらの方向へも変わっていく。
現代医学;
- 外的な偶然性で発病
- 攻撃的治療法…化学薬剤、手術、放射線
- 分析的 局所的
- 西洋論的
- 二元的
- 病気は「悪」
- 固定観念
- 生まれつきの体質は変わらない。不治の病もある。
悪い病原菌が外から入ってきたために引き起こされたもの。抗生物質その他の化学薬剤を使い病原菌の死滅をはかる。
自然医学;
- 内的な必然性で発病
- 自然的治療法…食物、鍼、灸、指圧、マッサージ、漢方
- 総合的 全体的
- 東洋論的
- 一元的
- 病気は「善」
- 流動観念
- 生きている限り、すべての病気は治るチャンスがある。
自然治癒力「ホメオスターシス=体内環境の恒常性を保とうとする機能」が発動し、必要があって体熱を高めているととらえる。だから、無理矢理熱を下げるのはよくない、むしろ発熱現象をスムーズに経過させるように体を暖めたりして、自然治癒力がよりよく働くようにしむける。"攻撃"とは逆の、適応あるいは同化による穏やかな療法をとる。それだからこそ、病気を本当に治しきることができるし、本来の健康をよみがえらせることができるのである。
4.菜食者がおちいりやすい落とし穴
- 白米や白パンが主食になっていること -->雑穀入り玄米ご飯を主食にする。
- 発酵食品を十分にとっていないこと -->腸内細菌を理想状態にするのに不可欠。味噌、しょうゆ、納豆、漬け物、甘酒など発酵食品を積極的にとる。
- 塩分を敵視して、塩分不足になっていること -->海には50種類以上のミネラル、微量元素が含まれている。自然の塩分をしっかり補給する。
5.長寿の条件
- 心を安定に保つこと
- 十分に体を使うこと
- 正しい食事をすること
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